口腔内に発生する腫瘍は、良性(線維腫、繊維性肉芽腫、エナメル芽腫)、悪性(偏平上皮がん、黒色腫、血管肉腫など)を問わず、犬ではよく認められています。その発生頻度は、犬の全腫瘍の4?6%と低いですが、年をとるに伴って悪性腫瘍(がん)の発生が増加する傾向にあります。口腔腫瘍は舌、歯肉、口蓋、頬部(きょうぶ)粘膜などに発生して、手遅れになることが多いのです。そのため、飼い主自身あるいは獣医師によって定期的に口腔の検査をすることが必要です。悪性腫瘍は移転しやすく、手術によって広範囲に切除しても再発率が高いため、予後はきわめて悪いです。
【症状】
発生の初期で小さければほとんど症状は認められません。しかし、進行して腫瘍が大きくなって成長したり、腫瘍塊が自壊したり、細菌感染がおきると、痛み、嚥下困難などの症状が認められて、食物を摂取しにくくなり体重減少がみられることもあります。また、悪性腫瘍が骨や軟部組織へ浸潤すると骨破壊や軟部組織の腫脹により顔の形が変形してしまうこともあります。さらに、悪性腫瘍では腫瘍が下顎や頸部のリンパ節へ移転し、しこりとして触知されることもあります。口の中にしこりができるのが特徴です。口臭やよだれが多い、口からの出血といった症状を示すこともあります。 歯茎や舌、口の粘膜などにできる腫瘍です。良性の腫瘍にはエプリス、乳頭腫、骨腫などがあり、悪性の腫瘍には、悪性黒色腫、扁平上皮癌、線維肉腫などがあります。
【原因】
原因は明らかではありませんが、歯周病との関係性が強く示唆されます。口腔腫瘍が、吻側(ふんそく)の歯肉や、舌に発生したものは飼い主によって比較的早期に発見されますが、硬口蓋(こうこうがい)、咽頭に近い部分では進行して症状が現れないかぎり見過ごされることが多いようです。そのため、定期的に口腔内の状態を観察する習慣をつけることが必要です。ミニチュアやトイグループなどの小型犬は、歯周病にかかりやすいので、口内腫瘍の発生する確率が高いという報告があります。
【治療】
口腔の腫瘍は、顎の骨に転移していることが多いので、手術をして、顎の骨ごと腫瘍を切除します。歯石を除去する時にみつかることが多いので、定期的に動物病院で歯石の除去とチェックをしてもらいましょう。小さい時から歯を磨く習慣をつけていれば、家庭でのチェックも可能です。治療は、基本的な外科的切除です。良性のものは切除は比較的容易ですが、悪性のものでは切除範囲を広く取る必要があります。とくに、進行した悪性腫瘍では腫瘍の周囲の正常組織を含んで広範囲に切除する必要があるため術後に顔の形が変わってしまうことになります。しかし、犬はそのような手術に対してもよく耐えてくれます。術後も早いうちに餌を食べられるようになります。但し、悪性腫瘍では広範囲に切除しても、局所的な再発や肺などへ転移する率が極めて高く、予後は悪い。